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市街地店の商圏の特徴と需要発生源

 交通条件に基づいて、大都市圏の「都心」と「市街地」、「郊外」が区分できることがわかったならば、次に、市街地に立地する店舗(市街地店)について、商圏の形成状態を見てみましょう。市街地店が、郊外に立地している店舗と大きく異なる点は、鉄道交通と自動車交通といった交通条件の違いによるものでありました。このような交通条件の違いは、商圏の形成状態に影響します。
 図1は、駅Aの近くに立地する市街地店の商圏を示しています。駅周辺に見られる濃い茶色のメッシュでは、1ha当たり6人や7人以上の顧客が発生しており、強い状態の商圏が形成されております。駅から離れるにつれて薄い茶色になり顧客数は減り、1人の顧客が発生する黄色のメッシュが周辺に広がっています。
 それでは、市街地店のこのような商圏の形成状態は何で決まるのでしょうか。その最大の要因は、駅の集客効果です。駅の集客効果には、教科書によりますと(高阪,2014, p.52)、乗車客を駅へ集める「集中性」と降車客を駅から吐き出す「発散性」に基づく二つが知られています。駅の周辺に居住する住民は、駅を利用するとき、周辺地域から駅に集まり(集中性)、集中的な駅勢圏を形成するのです。
 図2では、GIS(地理情報システム)を用いて、集中的な駅勢圏を機械的に発生してみました。メッシュの中心点は、最も近い駅に最短経路で結ばれています。駅Aの集中的な駅勢圏は赤色で、東側と西側にある駅は青色と緑色で示されています。市街地店の特徴は、このような“集中的な駅勢圏の中に立地している”ということです。このことから、集中的な駅勢圏は、市街地店の商圏形成に、大きく影響していると考えるのです。
 駅Aの実際の集中的駅勢圏はどのようなものなのでしょうか。ひとつの手がかりを示すのが図3で、駅Aの集中的駅勢圏は、4つの地区から成り立っています。地区内の円グラフは、各駅の(定期券)利用者数を表しています。駅Aの利用者数は青色で、東側と西側の駅はそれぞれ緑色とピンク色で示しています。駅Aの利用率は、地区1547と1548では70%台なので、集中的駅勢圏の核心部に当たります。地区1546と1549では約20%なので、その周辺部になります。
 次に、駅の集中的駅勢圏と市街地店の商圏との関係を見てみましょう。図3において、集中的駅勢圏の核心部は、多くの顧客がいる濃い茶色や薄い茶色のメッシュを含み、強い商圏を形成していることが読み取れます。また、集中的駅勢圏の周辺部の一部には、黄色の弱い商圏が見られます。この4地区は、実際には顧客の約8割を含みます。
  しかし、駅の集中的駅勢圏と市街地店の商圏とが重なり合わない部分も認められます。駅の集中的駅勢圏の東側の部分は、市街地店の商圏とよく一致するのですが、西側の部分は、市街地店の商圏と一致せず、商圏が西側に大きく広がっています。この西側への商圏の拡大は、大都市圏の都心部への指向性(方向定位:オーリエンテーション)と呼ばれる現象です。都心から見て、駅Aよりも一つ先の(遠い)駅の住民は、最寄駅と駅Aとを比較してあまり距離に変わりがないならば、駅Aを利用することも起こりうるので、市街地店の商圏は郊外側に拡大する場合があるのです。この郊外側への拡大部分は、顧客の残り2割に当たります。
 以上から、市街地店の商圏は、店舗の最寄駅の駅勢圏と郊外側の拡大部分で形成されていることが明らかになりました。距離で見ますと、市街地店の商圏は、1km圏から広くて2km圏の範囲に広がっています。このことは、“市街地店の需要発生源は、店舗周辺の常住人口である”ということを意味します。このことから、市街地店の商圏規模は、集中的駅勢圏を設定し、各地区の人口に駅利用率を乗じることで推定することができるようになります。

図1 市街地店の商圏の形成状態  🄫ジオリーテイル株式会社
図2 集中的な駅勢圏の形成  🄫ジオリーテイル株式会社
図3 集中的な駅勢圏と市街地店の商圏形成  🄫ジオリーテイル株式会社
2020/6/3
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